夢見るデリジョン 468 View (2023-10-28 03:09)

デイミアン・リラード:生まれ持ったもの

別れ



 デイムは7/2、トレードリクエストをし、11年間過ごしたポートランドに別れを告げた、とChris Haynesが報道した。当時はTwitterが制限をかけていた記憶があるが、それでもこのツイートに胸を痛めたブレイザーズファンはいたであろう。かくいう私もその一人だ。それから紆余曲折あり、デイムはとうとうミルウォーキーに旅立った。



 トレード当日デイムは、Farewell(別れ)という曲を投稿している。あまり気持ちのいい歌詞ではないので、視聴は自己責任で。



 歌詞から分かるように、私が紆余曲折と訳した移籍劇はとても気持ちがいいものではなかった。それでもブレイザーズファンの多くが彼の決断を受け入れたのには理由がある。それは11年の偉大なキャリアだ。8年連続のPO出場、1回のWCF到達。決して順風満帆なキャリアではなかったが、田舎町にとってはとても意味のあることだった。


 CJからの手紙


 ブレイザーズファンにとってはこの3年間は辛かった。CJマッカラムと別れ、テリーストッツと別れ、POから離れた。その中でデイムは心を支えてくれていた存在だった。バックスでの彼の幸運を祈り、当サイトなりの別れの挨拶としよう。ちなみにこれは今までの感謝を表したもので、悪い話=ディフェンスの話については一切しない。そういうのが気になる人はぜひ自分で調べて欲しい。


デイミアン・リラード


Damian Lillard #0/PG/MIL


 もしデイムを一言で表すならギャップアーティストだろうか。オフェンス面では彼の右に出るものはヨキッチくらいだろう。シュートが上手く、パスが上手く、ドライブにキレがあり、ファールを稼ぎ、フィニッシュまでも一級品だ。上手いと表したシュートレンジはロゴ付近まで広がっており、文字通りあり得ないギャップを作り出す。



 これは冗談でも何でもなく、彼がハーフコートでボールを持つだけでダブルチームが来る時期すらあった。それを証明するのが以下のデータだ。2021POでのダブルチームに対する得点効率についてのリンク。ブレイザーズは2021POで、ダブルチームに対して最も良い得点効率(1.22)を記録した。もちろん6試合だけであったことも理由の一つだが、これは彼がどれだけ多くのスペースを作り出していたか(どれだけインパクトのあるダブルチームをされたか)を幾らか表している。


 まさかダブルチームの話とハイライトだけで彼が完璧なオフェンシブプレイヤーであることを説明したりはしない。下図はオフェンスインパクトを表すO-Lebronの変遷を追ったものである。デイムがオレンジ、ヨキッチが青のプロットだ。



 深刻な怪我を抱えた2021-22シーズンを除けば、この5年間トップレベルの水準を維持していることがわかる。それは誰もが認めるトッププレイヤー、ヨキッチと比較しても決して見劣りすることはない。そして名実共にキャリアハイとなった昨シーズン、その数字はついにリーグトップを記録した。


ピックアンドロールの王様


 デイムの特徴的なプレーはいくつかある。やれドライブだ、ディープ3だ、クラッチだ。。。でもこれだけは絶対に外せない。PORファンにとってはデイム=ピックアンドロールだ。以下は2018-19シーズンからのPnRハンドラーオフェンスをトラックしたものだ。



 ここに名前が載っている選手は全員泣く子も黙るエリートハンドラーだ。だが、その中においても一人異彩を放っていることがわかる。過去5年間で4回90パーセンタイル(上位10%)を超え、超えなかったのは先述した21-22シーズンだけだ。彼のPnRゲームは非常に美しい。



 デイムのPnRがなぜアンストッパブルなのか。ハイライトの最初に紹介するのはドロップに対する回答だ。デイムはドロップに対して、40%に近いプルアップ3という完璧な答えを持っている。では、ドロップをやめるとどうなるのか。ハイライトを少し進めてみると分かるが、彼はこれにもドライブという完璧な回答を用意している。ただ、これでも彼のPnRゲームの全てではない。



 アーリースプリットこそが彼のシグネチャームーブである。通常のスプリットとは違い、スクリーンをセットする前に味方ビッグマンと相手ディフェンダーの間を割る。アーリースプリットは非常に独創的で美しい。残念ながら、最近は数を減らしているが。。。



 逆に数を増やしているのがHorns High Double Screenだ(名前不明)。ピック2枚でハンドラーガードを挟み込んで攻撃する。このプレーはおそらくストッツ最終年から使い出し、去年一気に数を増やした。最も印象的なのは昨シーズンのCHI戦だ。6ポゼッション連続でCHIに襲いかかり完全に破壊してみせた。ちなみにストッツが作ったこれの派生プレーの中で面白いと思ったものを連続して貼っておく。




 いくつか印象的なプレーについて話したが、ここまでの得点効率を可能にしているのは、シュート力やフィニッシュ能力ももちろんだが、ターンオーバーの少なさであろう。



 上図はPnRからターンオーバーしてしまう確率をトラックしたものだ。見てほしいこの異常な少なさを。ポイントゴットことクリスポールの最高は13.1%だが、デイムは一度もこれを下回っていない。誰も止められないスコアラーが最もミスが少ないハンドラーなのだ。もう言ってることは十分伝わっただろう、間違いなくPnRが一番上手いのはデイムだ。PnRの話の最後に気になる推移を紹介しよう。今まで際立ってなかったドローアファールの確率(正しくはFT)が去年急騰している。FTはスコアラーとして最も重要な要素であることを忘れないで。バックスでの新シーズンこれがどうなるか注目だ👀


クラッチ遺伝子



 NBAで最も刺激的な体験はクランチタイムだ。1ポゼッションいや1ドリブル毎に会場全体に緊張が伝わり、鼓動が高鳴る。スーパースターはこのクランチタイムで期待通りの活躍をする。デイムも例外ではない。デイムはPOでシリーズ決定ブザービーターを2本沈めており、その体験は非常にセンセーショナルであると共に、NBAの歴代記録タイだ。ではデイムのクラッチ遺伝子はどこから?



 クランチタイムはいつもいつも華々しい終わり方をする訳ではない。クラッチだと言われるプレイヤーは、その裏で何本もシュートを外している。そして多くのNBAファンは、割と少なくない頻度で目も当てられない惨状を目の当たりにする。あえて悪く言えば、エースがしょうもないターンオーバーをするのだ。あなたがフルシーズンウォッチャーなら画面の前で頷いているだろう。ではなぜデイムがクラッチか?デイムはターンオーバーをしない。


 もう一つデイムがクラッチな理由がある。それはFTドローが上手いこととFTがうまいことだ。2022-23シーズン、デイムはアイソレーションをしたポゼッションの21.4%でFTを獲得している。そして皆さんご存知の通り、FT%は90%を超える。つまり5回に一回は自動的に2-3点が加算されるようなものなのだ。それは当たり前にクラッチだろう?デイムがクラッチであるのには明確な理由があるという訳だ。


エリートパサー



 誤解を恐れず言うならば、デイムは決してマジシャンではない。ルカやヨキッチ、レブロンのように、目ん玉飛び出るびっくりパスや、上に目がついているかのような漫画的ビジョンを持っている訳でもない(と思う)。でもそれでもエリートなパサーだ。自分が作った余りにもデカいギャップを適切に処理し、ダブルチームも簡単にいなすことができる。



メンタリティ



 カーメロアンソニーの動画にゲスト出演した時のものが、彼の人柄をよく表していると思う。とはいっても自分はほとんど何を言ってるか分からないが、、、笑。こればっかりは正しいか分からないので自分で視聴することをオススメする。


 この動画はバブルで撮られたもので、かの有名なベバリー煽り事件の後に撮られたものだ笑。12分ごろでその話をしている。
カーメロ「デイムがFTを2本外すなんて0.1%もない笑」デイム「そうだよ」
 といった感じ。いかにも自信たっぷりだろう笑。そこからの話はそのメンタリティはどこで身につけたかの話に移る。面白かったが、よくわかってないので、ここで明言は避ける。


 最大の再生ピークは、D.O.L.L.A.についての説明だ。これはDifferent On Levels the Lord Allowedの略だ。ここもあまり理解していないが、デイムはデイムであり、デイミアンであり、リラードであり、ドーラであるという部分は理解できた。様々な側面があるという意味だ。みんなも自分な好きな呼び方で呼ぶと良い笑


カナトンとデイム


 最後にバックスで再びチームメイトとなったカナトンのエピソードを紹介しておこう。


終わりに



 バックスにはヤニスがいる。ミドルトンがいる。ブルック・ロペスがいる。デイムはオルドリッジ以来のオールスターのチームメイトだ(カーメロはいるが、時間が立ちすぎていた)。そして私の意見ではデイムは18-19シーズンを境に一個上のレベルに到達した。つまり、今のデイムがオールスタープレイヤーとプレーするのはこれが初めてだ。ありがとうデイム、そして更なる幸せを祈って。



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